「ある朝の出来事」

材料を切りそろえてから気付いた。
・・・・・・ここからどうすればいいの?
刃物は持ち慣れてるから、材料を覚えてる形に切りそろえることは何とかできた。
・・・・・・佐祐理みたいにくずが出ないようには出来なかったけど。
この後お鍋を取り出すところまでは覚えている。
・・・・・・なにをお鍋に入れるの?
まったくわからない。
・・・・・・そういえば料理ってしたことない。
そうだ、ずっと朝はパンと牛乳だけだったし、お昼は学食。夜は食べてなかった。
・・・・・・どうしよう?

とりあえずここは放って置いて、今度はお米を研ぐことにした。

佐祐理さん一体どこに出かけたんだろう?
突然俺を呼び出して「佐祐理、これから出かけます。舞のことよろしくお願いしますね」と言ったのが昨夜のこと。
なんでも家の用事らしいが、詳しいことは話してくれなかった。佐祐理さんの家族は舞との同居に反対していたから、連れ戻そうとしているのではないかと心配になる。
良くない用事でないことを祈るばかりだ。
そして、昨夜は家に戻ったのだが、朝になってひとつ心配事を思い出した。
------舞って料理出来たか?
2人が同居をはじめてから何度か夕食をご馳走してもらったが、舞が料理をしている姿をみたことはなかった。あいつがそういった話題を話したという記憶もない。
そこで、秋子さんからもらった昨日の残り物を携えて様子を見にいくことにした。

2人が住むアパートの前に立つと妙な匂いがしてきた。
明らかに焦げ臭い。
大変なことになってなければいいのだが・・・・・・
引き返したくなる足を引っ張って、アパートの階段を登った。
扉の前に立つと一層こげた匂いが鼻につく。匂いの元はやはりここらしい。
ピンポーン
呼び鈴に反応して足音が近づいてくる。そして扉が開くと・・・・・・
「祐一、助かった」
部屋の中、特に小さなキッチンは散々たる状態になっていた。
「舞・・・・・・この状況は何だ?」
「朝食を作っていたらこうなった」
本人は大真面目らしい。しかし、どういう朝食を作ろうとすれば、こんな状態になるんだ?
「舞さん献立は・・・・・・?」
「ご飯・お味噌汁・お魚」
それは二人のいつもの朝食メニューだ。しかし今の状況からそれらが完成を予想するのはムリだ。

「あの・・・あそこで蒸気を吹き上げているのは?」
・・・炊飯器からは澱粉混じりの熱湯が噴き出している。蓋を開ける気にはなれない。
「お米はお茶碗で3杯分量った。水はお釜の目盛りにあわせた」
計量カップはどこにいったのでしょう?

「ところで味噌汁は?」
・・・お鍋の中身は見たいとは思えないほど煮立っているようだ。
「煮込めば美味しくなるのかと思った。どうやら違うらしい」
そう気付いたら火を止めましょうよ。

「この焦げ臭いのは・・・・・・」
・・・フライパンが黒煙を上げている。
「・・・・・・しまった忘れてた」
火つけっぱなしで離れるなよ。って言うか魚焼き用のグリルがあっただろ。
「呼び出した祐一が悪い」
「八つ当たりはよせ!」
離れざまにチョップを放って舞はキッチンへ戻っていく。いつものことなので、軽くかわして後を追った。

「舞、取り合えずおかずは持ってきたから、そこ片付けろ」
「やっぱり・・・・・・駄目?」
「健闘空しくな」
「味噌汁だけでも・・・・・・」
そういって鍋を持ってきたが、煮詰まるとかいうのを通り過ぎて焦げ付いていた。
しかし、中の材料は綺麗に切りそろえられていた。さすが刃物には慣れてるな。
「残念だったな」
「祐一、酷い」
「そう言われてもだめなものはだめだ」
見た目からして碁石クッキーや例のジャムと同等かそれ以上の破壊力を有しているのは明白だ。
舞には申し訳ないが俺はもう少し生きていたい。
「わかった、じゃぁ祐一作って」
なんだか予想通りの展開になってしまったが仕方ない。
「その前に片付けな」
「わかった」
結局朝食にありつけたのは昼食時になった頃だった。


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