それは舞い散る桜のように コラボレーションシリーズ
「お子様セット」
「桜井君ごめんね、また今度おごるから、ね」
本当はひかりがすごく失礼なことを言ったような気がしてちゃんと謝らなくちゃいけないと思ったのに、ひかりが無理に私の手を引っ張るから、まるで逃げ出すようにして私はクレープ屋と桜井君の前を後にした。
「ねぇひかりどこに向かってるの? 手、結構痛いんだけど」
「すぐそこよ、だまってついてらっしゃい。すぐ着替えたいんでしょ」
確かに私は頭から水をかぶってずぶ濡れ状態。ブラウスの胸元に視線を落とせば透けちゃってて下着の形がくっきり・・・・・・桜井君に見られちゃったな。
「それはそうだけど・・・・・・
ところでなんでそんなに楽しそうに私の手を引っ張ってるの?」
私の手を半ば強引に引っ張るひかりは、なぜだか凄く楽しそうな顔つきで私の腕を掴んでる。
「ええ?そんな事なないわよ
さぁ、ついたわ。ここならこだまにお似合いの服がどっさり」
ひかりに引きずり込まれた扉の先には・・・・・・
「ちょっとひかり、ここ子供服のお店じゃない!」
落ち着いていてこぢんまりとした店内には、いかにも子供服っぽい服ばかりティスプレイされている。
「なにいってるの、これでも立派なブティックってやつよ」
すると奥から店員さんらしき人が現れた。中性的な雰囲気のある人だ。
うぅ、どうしよう。このまま出てったら冷やかしみたいで申し訳ないし。でも店員さん優しそうだから大丈夫かな?それに、値段もちょっと高そうだし、やっぱり買うにはかなり抵抗あるなこの服・・・・・・着たら絶対また間違われそう。
「いらっしゃいませ、まぁ可愛いお嬢さん!妹さんでらっしゃるの?」
「はい、そうなんです!可愛いでしょ。
この娘ったら道端で水かけられて困難なっちゃったんですよ、申し訳ないんだけど、その場しのぎでいいから上下見繕ってくれないかしら」
「ちょっと、ひかあうっ!」
反論しようとする私の口を後ろからすかさずひかりが抑えてくる。ああ、ちょっとまって!
「それは大変でしたね
それじゃぁおまかせにしてくださるなら、サービスしちゃいます」
「本当ですか!それじゃぁお願いしちゃおうかしら。ねぇこだま」
そう訊きながらもひかりは私の口から手を放してない。これじゃ言い返せないじゃない!
「ほら、安くしてもらえるみたいだし。どうせ帰るまでの辛抱なんだからいいじゃない。」
ひかりが耳打ちしてくる。
「ここまで言われて断わるのも申し訳ないでしょ」
「確かに折角の好意を無駄にするのも勿体無いね。それに、今日はこんなことばっかりだから、何かあってももう気にしないよ。」
そうひかりに呟いて私は首を縦に振った。
「この娘も喜んでるみたいなんで、よろしくお願いします」
まさにしてやったりって顔して、ひかりはこう言ったのだ。

「ねぇ、ねぇなんで私達こんなところにいるのかなぁ?」
「なんでって、買い物して、散歩して、最後にシャルルマーニュっていつもコースじゃない」
ひかりはさも当然のように言う。
「今日はいつも通りじゃないでしょ!」
「まぁそんなに怒らない、怒らない
あっすいません注文お願いします」
「ちょ、ちょっと。私頼むもの決めてないよぉ」
だけど店員さんはやってきてしまった。そしてひかりはメニューには目もくれず注文し出す。
「私はレアチーズとコーヒーのセット。あと、この娘にはお子様セット、オレンジジュースで」
「かしこまりました。
ところで、いかにもお子様っぽい方でも、小学生以上の方はお子様セットは普通のセットと同じ価格になりますがよろしいでしょうか?」
ひかりは「しまった」って顔してる。よかった私そんなに子供っぽいわけじゃないんだ。ってあれ?
「いえいえ、この娘ちょっと大人っぽい気もしますけど、れっきとした11歳・・・・・・ねぇこだま」
「や、確かに子供っぽく見えるんですけど、目の前にいらっしゃるのは里見こだまさん17歳ですよね、ひかり先輩?」
なんと、注文を取りにきたウェイトレスさんは八重ちゃん。助けに船とはまさにこのこと。
「八重ちゃん!」
「八重樫!しまったこいつがいることを忘れてたわ」
「ところで、どうしてこだま先輩、そんないかにもって感じの格好なんです?」
「そう、それなの!ねぇ聞いてよ八重ちゃん・・・・・・」
私は八重ちゃんに泣きながら一連の悪夢を話した。
そう、結局あのお店で着せ替え人形と化した私は、黒を基調に白を加えたモノトーンで上下しっかりとまとめられていて、なぜかすっごく短いスカートに、これもどうしてかわからないけど黒のニーソックス。とどめに靴までかかとが高めの黒い靴に履き替えさせられた。
あの店員さんは実はオーナーさんで、凄くノリノリで店中からいろいろ引っ張り出してきて、私に着せてはひかりとああでもないこうでもないと話をして、今度はひかりが選んできてはまた話し合って、それが何度となく続いた。
けど私には発言権一切なし。というか二人とも盛り上がりすぎて聞こえてない。
そんなわけで、悪夢のようなやり取りが数十回は繰り返された頃、私はいわゆるゴシック風と呼ばれる服装にすっかり包まれていた。
「や、先輩にすっかりお似合いです。なにか狙ってます?」
「これならモデルとしてやっていけそうよねぇ、つばさはどう思う?」
「全く何も狙ってません!」
「や、そんな格好で一生懸命否定されても、余計にそっち系の人間の感情を引き出すだけですよ」
すっかり私の格好を肯定しちゃってるよ八重ちゃん。
「そっち系って何?」
「うーん。例えば・・・・・・桜井舞人とか」
「なんでそこで桜井君なのぉ。彼ははそんな人じゃないよぉ」
「そうだったのね。あいつにはそんな趣味が・・・・・・
もしかして今日の一件もあいつの仕組んだ巧妙なドッキリかも。もしかして店内にあいつ潜んでない?」
「ひかりまでそういうこと言う。だから桜井君はそんな人じゃないって。」
「なんだかやたらとあいつの肩持つようだけど、もしかしてこだま?」
「そんなんじゃないよぉ~」
「ま、あいつはきてませんから大丈夫ですよ先輩。何なら呼び出しましょうか?」
八重ちゃんまで私のことからかってるみたい。もう何がなんだかわからないよぉ。
「ところでこだま先輩、オーダーはお子様セットでいいんですか?」
「そうだよね、確かにお子様セットは捨てがたいけど、さすがに玩具は要らないよ。
じゃぁ、えっとぉ・・・・・・ホットケーキセット、ホットミルクで。メープルシロップはたっぷりお願いね!」
私を見つめる二人。あれ?私何か変な注文したかな。
「・・・・・・よけい子供っぽい注文してどうするんですか先輩」
「・・・・・・やっぱりあんたお子様ね。しかも捨てがたいときたもんだ」
「どうして二人ともあきれてるの?もしかしてホットケーキは駄目?」
『あたりまえでしょ』
・・・・・・二人とも見事にハモってる。
そんなにホットケーキって子供っぽいのかなぁ?


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